社会保険とは、老化や病気、怪我、死亡などのリスクに備えるための公的な保険をいい、医療保険、年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険の総称です。

社会保険については、外国人労働者の場合も日本人労働者の場合も原則として同じです。

1. 会社等で働く人の社会保険

社会保険とは

社会保険とは、老化や病気、怪我、死亡などのリスクに備えるための公的な保険をいい、医療保険、年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険の総称です。
社会保険については、外国人労働者の場合も日本人労働者の場合も原則として同じです。

⑴厚生年金保険

厚生年金保険とは、厚生年金保険法による、老齢厚生年金、障害厚生年金など各種年金給付を内容とする年金保険制度をいいます。

保険料月額:標準報酬月額の18.3%(会社と被保険者が半分ずつ負担)
賞与に係る保険料:標準賞与額の18.3%(会社と被保険者が半分ずつ負担)

⑵健康保険

健康保険とは、会社で働く従業員とその家族が加入する医療保険をいいます。
保険料は会社と被保険者が半分ずつ負担します。

⑶雇用保険

⑷労災保険

2.厚生年金保険の給付の内容

老後には、全ての人が老齢基礎年金を、厚生年金に加入していた人は、それに加えて、老齢厚生年金を受け取ることができます。また、老後だけでなく、障害を負ったときの障害年金や、家族が亡くなったときに遺族に支給される遺族年金があります。

(1)老齢厚生年金

まず、厚生年金保険の加入資格がない場合、国民年金のみに加入することになるため、将来支給される年金は基礎年金のみになります。

他方、厚生年金保険に加入している場合、基礎年金に加えて、報酬比例の年金(厚生年金)が終身でもらえることになり、将来もらえる年金が増えます。

例えば、月収88,000円の者の場合、毎月8,000円(年額96,000円)の保険料で、目安として、40年間加入した場合では毎月19,300円(年額231,500円)の年金がもらえ、1年間だけ加入した場合でも毎月500円(年額5,800円)の年金が終身でもらえます。

また、保険料を使用者と労働者で折半することになるので、自身で国民年金に加入している場合より、厚生年金保険に加入した方が、保険料が安くなることがあります。

(2)障害厚生年金

次に、厚生年金保険に加入中に障害がある状態になり、日常生活を送ることが困難になった場合、障害厚生年金が支給され、厚生年金保険に加入していない場合よりも多くの年金が支給されます。

厚生年金保険ではなく国民年金に加入している場合、障害等級1級または2級の場合に障害基礎年金が支給されるにとどまりますが、障害厚生年金に加入している場合、障害厚生年金は、障害等級3級の場合も支給され、月額約49,000円の最低保障額が設けられており、手厚い給付を受けることができます。

(3)遺族厚生年金

また、厚生年金保険に加入していた者が死亡した場合、遺族に遺族厚生年金が支給され、やはり厚生年金保険に加入していない場合よりも多くの年金が支給されます。

厚生年金保険ではなく国民年金に加入している場合、遺族基礎年金は18歳未満の子がいない場合は配偶者に支給されませんが、遺族厚生年金は18歳未満の子がいない場合も配偶者に支給されます。

3.健康保険の給付の内容

病気や怪我をしたときに医療費を負担する医療給付は、社会保険に加入していない場合の国民健康保険も、社会保険に加入している場合の健康保険も、本人、家族で差はありません。

ただ、一部の現金給付(傷病手当金、出産手当金)について、国民健康保険よりも、健康保険の方が手厚くなっています。

また、厚生年金保険と同じく、保険料を使用者と労働者で折半することになるので、自身で国民健康保険に加入している場合より、健康保険に加入した方が、保険料が安くなることがあります。

4.厚生年金保険・健康保険の加入

⑴厚生年金保険・健康保険の加入義務

次の事業所は、厚生年金保険・健康保険の加入が法律で義務づけられています。

①強制適用事業所
すべての法人事業所(被保険者1人以上)

②個人事業所
(常時従業員5人以上雇用している)

※法人事業所であっても、学校法人の事業所は、私立学校教職員共済制度に加入することになります。

※5人以上の個人事業所であっても、サービス業の一部、農林業、水産業、畜産業などの事業所は強制適用事業所から除かれます。

※令和4年10月から法律・会計に係る業務を行う士業は強制適用事業所になります。

※強制適用事業所以外の事業所でも、一定の条件を満たせば厚生年金保険と健康保険に加入することができます。(任意適用事業所)

⑵被保険者とは

厚生年金保険・健康保険では、会社(事業所)単位で適用事業所となり、その事業所に使用される人はすべて被保険者になります。
※厚生年金保険は、原則70歳に達するまでの加入となります。

⑶厚生年金保険・健康保険の加入要件

正社員や法人の代表者、役員等は被保険者になります。

パートタイマー・アルバイト等でも、1週間の所定労働時間および1ヶ月の所定労働日数が同じ事業所で同様の業務に従事している正社員の4分の3以上である方は、被保険者になります。

また、正社員の4分の3未満であっても、500人を超える企業に勤務し、週の所定労働時間が20時間以上など一定の要件を満たす方は、被保険者になります。
※令和4年10月からは100人を超える企業、令和6年10月からは50人を超える企業に勤務し、一定の要件を満たす方は被保険者になります。

⑷年金受給者を雇用した場合

70歳未満で、老齢厚生年金(特別支給を含む)を受給している人を雇用した場合でも、加入要件を満たす方は、被保険者になります。

なお、在職中の老齢厚生年金は給料・賞与・年金から算出される1ヶ月当たりの合計収入に応じて、年金の一部または全部が支給停止になる場合があります。

⑸外国人を雇用した場合

加入要件を満たす方は、国籍を問わず被保険者になります。

⑹試用期間中の社会保険の取扱い

法律上の雇用契約や本人の同意にかかわりなく、加入要件を満たす方は、試用期間の当初から被保険者になります。

5.労働・社会保険に関する外国人雇用管理指針(抜粋)

⑴制度の周知及び必要な手続の履行等

事業主は、外国人労働者に対し、労働・社会保険に係る法令の内容及び保険給付に係る請求手続等について、雇入れ時に行政機関が作成している多言語対応の広報資料等を活用する、母国語等を用いて説明する等、外国人労働者が理解できる方法により周知に努めること。

また、労働・社会保険に係る法令の定めるところに従い、被保険者に該当する外国人労働者に係る適用手続等必要な手続をとること。(後略)

⑵保険給付の請求等についての援助

イ 雇用保険

事業主は、外国人労働者が離職する場合には、外国人労働者本人への雇用保険被保険者離職票の交付等、必要な手続を行うとともに、失業等給付の受給に係る公共職業安定所の窓口の教示その他必要な援助を行うように努めること。

ロ 労働者災害補償保険

事業主は、外国人労働者に係る労働災害等が発生した場合には、労働者災害補償保険の給付の請求その他の手続に関し、外国人労働者やその家族等からの相談に応ずること。
加えて、外国人労働者やその家族等が自ら手続を行うことが困難な場合等には、その手続を行うことができるよう必要な援助を行うよう努めること。

ハ 健康保険

事業主は、外国人労働者が病気、負傷等(労働災害によるものを除く。)のため就業することができない場合には、健康保険において傷病手当金が支給され得ることについて、当該外国人労働者に教示するよう努めること。