外国人労働者が英語しか分からない場合、団体交渉は英語で行わなければならないでしょうか?

外国人労働者との団体交渉は、必ずしも外国語で行わなければならないわけではありませんが、実質的な交渉を行えるように配慮を行う必要があります。

団体交渉の使用言語に関するルール

東京都労働委員会の事案で、東京学芸大学の附属国際中等学校で勤務する外国人教員が労働組合に加入して、同大学に団体交渉を申し入れたという事案があります。
(東京学芸大学不当労働行為審査事件・都労委平28・7・19)

組合側は団体交渉の使用言語について英語を使用するように求めましたが、大学側は日本語を使用すること、かつ通訳も組合側で手配するよう求めました。

また、実際の団体交渉では、組合側が英語で話し、大学側が日本語で話しをしたことから、円滑な意思疎通ができず、その後も大学側は日本語による交渉及び組合側による通訳の手配という要求を譲らなかったため、交渉が打ち切りとなりました。

東京都労働委員会は、団体交渉のルールは労使合意で決定するのが原則であるため、使用言語についても、当然に日本語を使用すべきとはいえないとし、本事案では外国人労働者が、職場において日常会話だけではなく業務連絡・指示等も英語でやり取りしていることから、団体交渉の場でも、英語による交渉を求めたことには、相応の理由があるとしました。

そして、組合側が、労使双方が互いに相手の言語を理解できる者を同行させることを提案する等一定の譲歩を示しているにもかかわらず、大学側は、日本語による交渉及び組合側による通訳の手配という条件に固執し、最終的に団体交渉を打ち切っていることから、不合理な条件に固執したものであり、正当な理由のない団交拒否にあたると判断しています。

そして、命令主文では、「日本語による交渉並びに同組合らによる通訳者の手配及び同行という条件に固執することなく、誠実な団体交渉に応じなければならない。」と命じています。

以上からすると、団体交渉の使用言語について、組合から英語を使用するように指定があった場合であっても、必ずしも英語で行わなければならないわけではありませんが、実質的な交渉を行えるように使用者側でも一定の配慮を行う必要があります。